山崎山林の閉鎖要因の考察3賠償責任

 今までの要因である1景気低迷と2林業は山崎山林を閉鎖するまでの要因にはなっていないことは明確です。開山しておけば外部民間団体が利用し、売上が上がり経費もかかりますが赤字にはなりません。

 では何故、閉山するにまで至ったのか?それなりの理由があると思います。釧路新聞紙面には何も書かれていませんが、考えられる要因をピックアップして考察してみます。

 まずは賠償責任です。山崎山林のほとんどが個人の所有林です(田中敦夫著「森を歩く−森林セラピーへのいざない−」では社有林となっていますが誤りです)。約10分の1は法人所有林となっています。全てが民有林です。

 東北の国有林の障害事故は2月9日の最高裁で林野庁などの地権者と管理者の賠償責任確定の判決となりました。山崎山林で同じような事故が起きた場合、個人の地権者と法人の管理会社の賠償責任となります。個人ではとても責任を取れる補償額ではありません。山崎山林258ha全域に賠償責任保険をかけると年間数百万円となります。入山料一人1,000円ではまかなえない保険料です。

 山中慎一朗が構築した山崎山林マニュアルでは、入山はガイドの随伴を必須とし全ての責任はガイドとして地権者の理解を得ています。ガイドが加入する賠償責任保険は補償額2億円以上としても保険料は年間数千円です。もちろんガイドの個人負担となります。

 山崎山林マニュアルでは傷害保険の加入も促し、ガイドによるリスクマネジメントと賠償責任保険のもとで催行される完璧なツアーとしましたが、法的には完璧はありえません。

 裁判の場合、原告は誰を訴えても良いのです。これほどのマニュアルがあっても原告が地権者を訴えて裁判所が受ければ裁判が始まります。訴えられた地権者がガイドを訴えれば裁判は始まることでしょう。最終的にガイドの賠償責任保険で補償額をまかなうことができても、それぞれの裁判にかかった地権者の経費と時間、リスクは大きなものとなります。日本の法律では自己責任と事前確認責任はありえないのです。まだ注目も集めていませんし大きな問題にもなっていませんがこれからフィールド体験を左右する課題となることは間違いありません。

 では山崎山林がこの最高裁の判決によって閉鎖されたかというとそうでもないようです。山崎山林の閉鎖に向かったのは2月10日です。地権者が2月9日の最高裁判決を知ってジャッジしたとは考えられません。

 他の要因の考察が必要なようです。

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