森のキモチ「地上の命」

「いろんな生きものがどんどん出てきたね」
「どっから出てきたと思う?」
「草は土の中?」
「そうだね。ほとんどの生き物は土の中で冬を越えるんだ。木の中とかね。だから森には命がたくさんあるんだ。いつもね。でも、春になると地上の命が見えてくる」
「ちじょうのイノチ?」
「森にはとっても短い地上の命がたくさんある。キノコ、虫、花。絶妙なタイミングで生きてるんだ。だから面白い」
「いつも見れるわけじゃないもんね」
「僕たちもそうなんだ。いつも森に来れるわけじゃない。今日だってリッちゃんが誘ってくれたから森に来た。病気だったらもちろん来れない。東京で働いていたら森なんか好きにならなかった。リッちゃんにも会えなかった。僕の人生の絶妙なタイミングで今、リッちゃんと森にいるんだ」
「すごいね」
「そう。そんなにすごい事なのに、そのすごさに気付かないで生きてる人が多いんだ。今が幸せか不幸か、これからが幸せかどうか、そこで生きてる。そんなの簡単だよ。どんな状況にあっても、何をしていようと、今のタイミングを活かせるかどうかなんだ。かぎわける力だよ。森の生き物と同じようにタイミングをかぎわける力をつければ楽しく生きていける。そう思うんだけど、やっぱり難しいね」
「どっちなの?」
「人の生活に四季が無くなってしまった。まずは季節の移り変わりと共に生きる生き方を取り戻すことからかな」

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