第5巻 渡辺淳一全集「阿寒に果つ 冬の花火」


 「阿寒に果つ」は渡辺淳一作品の中で山中慎一朗は2作目の読破となる。「失楽園」以来だ。日本経済新聞に掲載され、大ブームとなり映画化もされたということで、初めて読んだ渡辺淳一作品だった。映画もテレビで見たが、どちらもsex話といった感で印象には残らなかった。「こんな作風を書く作者がいるのだな」といったところだ。

 では何故、2作目を読んだかというと「阿寒に果つ」は阿寒が舞台に出て、クライマックスのステージとなっているからだ。

「あたりは真っ白よ。見えるものといえば青い湖と、白い雪だけ。あんなところにいたら誰だって真っ白のなかに帰りたいと、全身で願いたくなるでしょう」
 蘭子は歌うようにいった。

 釧北峠で純子は死んだのだが、現在の旧釧北峠からは樹間を通してはっきりとした阿寒湖はなかなか望めない。ましてや1月では阿寒湖は結氷しており、真っ白な氷原で、青い湖面は望めない。

 小説ならではの演出なのであろう。

「死ぬ人は、自分が大切だから死ぬんだと思うわ」
 純子は歌うようにいうと、

 どうも渡辺淳一氏は「歌うようにいう」のが好きなようだ。

 自殺のほとんどは衝動的なもののように感じる。そして、何よりも自分を大切と思わない人は稀だ。

 「果つ」は、「果てる」の文語体なのだが、ワードでは変換されない。これも渡辺淳一氏ならではの言葉づかいのなのだろう。

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