「シンちゃん、どこ行くの?」
「リッちゃん、来てごらん。この時期ならではの面白いものが見れるかもしれない」
「ホントに?」
「リッちゃん、滑るから気を付けてね」
「水がながれてる」
「山﨑沼から釧路湿原に流れる沢だ。きれいな水でしょ」
「うん。きれいだね。ちっちゃな魚も泳いでる」
「リッちゃん見つけるの早いね。ほら、そこのヘリの水が流れてない所に黒いかたまりがあるでしょ」
「ホントだ。何なの?」
「貝だよ。ドブガイ」
「ドブガイ」
「この頃になると、打ち上げられているんだ」
「なんで?」
「わからない。この前の大雨と雪解けで水が増えて流されたのかな?去年も同じ頃に打ち上げられているのを見たよ。ほら、これなんかまだ生きてるみたいでしょ」
「ホントだ。中の白いのがうごいてる。シンちゃんの手よりも大きいね」
「こんな大きな貝もいるんだ。いつもは泥の中にいるから見ることはできないんだけど、この時期だけこうやって泥の中から出てるのが見られるんだ。もしかしたら卵を産むために出て来てるのかもしれないね。なんで、こんなにきれいな沢に住んでいるのにドブガイなのかな?」
「ドブってきたないの?」
「リッちゃん、ドブ知らないの?」
「うーん?」
「そういえば、最近ドブって言わないのかな。それに蓋されちゃって見ることもないのかな。」
「見たことない」
「リッちゃん。見ての通りドブガイの住むところはきれいな水が流れているから、ドブはきれいなんだよ」
「ホントに?」
「ドブガイを信じてあげて」
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